偏食観劇屋

色々見たい、偏ったエンタメファン

井上ひさし戯曲と稲垣啄木について

じんわりいい作品を見たなぁと思いました。

楽しかったね~とか泣いたね~とか友達と語り合う感じではないけど

満足度は非常に高かった。

ずっと見たかったゴローさんの舞台も見れたし

ずっと気になってた井上ひさし作品も見れたし。

初演のツトムとは比べ物にならないぐらいいい役者になった、と

ゴローさんファンの方が書いてらしたのであれは見に行けなくてよかったのかもしれない。

あの頃はJに興味がなかったし下手したら見て嫌いになってたかもわからん。

いやいやでも思い返すと自分の行動は興味ある人の行動だったよな・・・

あの辺りから実は気になり始めたのかもしれない。

あの子やこの子を夢中にさせるあの人たちって何者なんだろう??って。

舞台は2シーンのみで、啄木の残した日記を読む妻がいる海辺の家のシーンと

その日記の中の啄木達が暮らす家のシーン。

日記の中がメインなので、ほぼこの部屋のみのワンシチュエーション。

階下へ降りた人はいなくなるし、外出中の人もいない。

外を歩く人は階上で窓を開けてる部屋の中の人に呼びかけたりはするので

声はするから登場してないとは言い切れないけど、

基本的には部屋の中にいる人だけがそのシーンの登場人物ということになる。

久しぶりに舞台らしい舞台を見たなぁという感じかな。

その前が美男だったので余計に。

(比べたら演劇ファンに怒られそうだ・・)

ちょっと前にテレビでやってたたいこどんどんと父と暮らせばを見たんだけど

それらと、だいぶ前に見たムサシと、今回の舞台となんとなく井上ひさしさんの作風がわかってきた。

どれも大きい事件は起きなくて、なんでもない日々の中で生きる人たちを描いてる。

といっても舞台になっているシーンの前には原爆投下があったり巌流島があったり事件は起こってる。

あるいはたいこどんどんはけっこうな事件がたくさん起こる。

けど描き方としてどれか一つを山場にしないから全体的には淡々と流れてくんだよね。

会話を重視していて、そのやり取りはおかしくて笑ってしまうのだけど

大事なところはちゃんと心に響いてきて、父と暮らせばなんてずーーーっと泣いて見てた。

目一杯「泣かせるシーン」を作り上げるイヤらしさが全くないのが素晴らしい。

この舞台もまさにそんな感じ。

見て思ったのはこの人、ホントチャーミングだなってこと。

「しょーもない男なのになぜか憎めない」っていうのがホントはまっていて。

染五郎もそういうタイプだけど、あっちはもっとギラっとした色気がある。

こちらは飄々と・・・なんていうかなサラサラしてる。

中性的っていうのかな?

嫁姑の争いに巻き込まれまいとかわしてるのとか笑っちゃう。

金田一くんに何かとお金をもらってるのも、ホント酷いんだけどしょうがないなぁって気になってしまう。

なんていうか、ちゃんと演技をしてて舞台の世界に生きてるんだけど

その啄木を通じて彼の魅力がすごくよく伝わってきた。

それは、他の役者さんも同じ。

役と役者含め出ているみんなが魅力的に見える。

あとね、ついつい見取れてしまうのは着物の所作。

出かけて行ったり帰ってきたりのシーンで頻繁に着替えるんだけどこれがいいのです!

最初の夏のシーン、しょっぱなから見とれてしまった。

着物の上半身、両袖抜いて帯のところでだらりとさせてうちわを仰いでるんだけど

下に金田一くんが通ったのが見えて、呼び込むシーンがあって。

お客さんが来るからって袖に手を入れてはだけた身頃を合わせてってやるの。

なんかとっても手慣れた感じですごくステキなのだ!

それから外出から帰ってきて着替えるシーン。

履いていた袴を脱いで、着物を着換えて…。

ここはコミカルなシーンだったのだけど、脱いだり着たり。

着物を扱うゴロさんをたっぷり見れました。