偏食観劇屋

色々見たい、偏ったエンタメファン

善き人

日本版を見てきた。

最初からかなり興味深くて、最後ラストシーンは真逆じゃん!!とフルフルしてしまった。

長塚さんはNTLを見てるんだろうか?見てなくてもどんな演出をしてたか知ってたんだろうか?

 

まず幕が上がる前に楽器の音合わせの音が聞こえてえ?なんで楽器いるの??とビックリ。幕が開くとNTLでは頭の中の妄想だった楽団が実際にいて生演奏してる。ジョンが意識的に音量をセーブすると演奏も止まる。抑えたくても抑えられなくて小さな音で演奏したり、妄想の登場人物が歌ったり喋ったり、特に1幕はかなりコミカルな雰囲気があった。

展開はわかってるから2幕どう進むんだろう?とますますそそられて。

NTLの時誰かが、ジョンが実際にモーリスに会ったのはここまでであとはもうそうじゃないか、と呟いてたのを見たのだけど私にはそれがわからなかった。のだが、日本版はそこがわかりやすく楽団の一員としてモーリスが出てくるシーンがある。多分そこからはジョンの妄想で、妄想だから結構ひどいことも言ってるし、モーリスもやけに物分かりが良かったり急に脅したり、ジョンの揺れる心を表しているように感じた。

そしてラストシーン、最初から幻の楽団をリアルにステージに出してしまって、リアルな楽団どうするの?と思ったらまさかの思い切り真逆な演出で、リアル楽団は無人だった!!!なんだこれ!すごい!面白い!!

そしてさらに怖かったのは、キャスト全員無人のリアル楽団の方を向いて客席に背を向けてたってるのだけど、ナチ側の役で出ていた役者以外が次々と崩れ落ちてく。ガス室の犠牲者。

 

怖いと言えば、ジョンがぐだぐだとモーリスに言い訳してるシーンの中で、すごく嫌なセリフがあって、ユダヤ人を迫害することに対して良い悪いじゃない、ただある現実を受け入れるんだみたいなのがあるんだけど、これって誹謗中傷に表現の自由を出したり、パレスチナのジェノサイドにハマスを持ち出すのと全く一緒で心底ゾッとした。

個人的にはNTLに軍配が上がるけど見比べるのがここまで面白いものもなかなかいい体験だった。