初日、日本初上演を見てきました。
らちくんに鈴木裕美さん。そして上山くんに小西くん。
一路さんもたまたま見たバラエティでキュートなところを知ったばかりで期待しかなかった。
すっごい面白かったです。
面白かった、と言っていいのかわからないストーリーではあるけど。
スリルミーみたいな感じ。
すっごいよかったです。
ステージの4カ所に小さな回る盆があって、真ん中にソファの乗った大きめの盆。
これが時々キャストを乗せてまわるんだけど、オルゴールみたいでどっかファンタジー。
怖いお伽話って感じの雰囲気を全体的に出してるいい効果でした。
それと天井から囲われたドレープ。
最後のシーンまで変わったセットだなぁと思ってたけど、何か意味があるとは考えてなかった。
奥には大きな扉。
四角い箱の中に部屋があって全ての出捌けは奥の扉から。
4人が集まってからはほぼ4人は部屋の中なので、メリーだけが扉を出たり捌けたりする。
あと事件のシーンでは実態のない博士が入ってくる。
4人が最後のシーンで記憶を持ったまま生きていくと決めて暗転。
するとドレープが全て落ち、周りに森が現れる。
やっと4人がこの呪われた家から解放されるという視覚的に見せるシーン。
かなりインパクトがあった。
音楽で印象的だったのはカッコー。
多分カッコーワルツをアレンジしてたんだけど、最初は子供時代の楽しいシーンで4人がカッコー!カッコー!って歌ってて。
それが気付いたらカッコーの泣き声だけが時々聞こえるだけになって。
不穏な空気が訪れる度に「カッコー」どこかで鳴いている。
不安をかき立てる音。
歌の方も若干マイナーに寄せてあって楽しそうに歌ってるのに不穏。
とても効果的だった。
気掛かりを解明せずにはいられない責任感の強いお兄ちゃん。
かっこいい自分でありたいのにちょっと気弱でやさしい画家を目指す次男。
男勝りでしたたかな唯一の女の子。
無邪気で感受性豊かな小説家志望の末っ子。
この物語で、この4人の絆が痛いくらい愛おしかった。
4人は博士に引き取られた孤児で誰も血の繋がりはないんだけど、揺るぎない関係がある。
火事をきっかけに離れ離れになってしまったけどちょっとずつ記憶を紐解いていくと、お互いがお互いを守ろうと命を懸けた兄弟愛が浮かんでくる。
クライマックスの事件の日のシーン。
私は人体実験をしていた、痛みを忘れる薬を開発していたという研究ノートのくだりで、だいたい起こることが想像はできていた。
児童虐待、そこに1人だけ女の子がいたら…。
このシーンはとっても辛くて、でも3人の男の子達のアンナに対する愛がきゅ〜っと切なくて愛おしかった。
水曜日に何かよくないことが起こっていると気付いた4人。
逃げ出そうと提案する次男に、アンナとお兄ちゃんは残って確かめたい!と言う。
結局4人は一緒に残り、絶対にあの薬を飲んじゃダメだ、絶対に4人離れちゃダメだって約束をする。
その日4人が集まる部屋に、博士がやってきた。
ソファにいるアンナに近づく博士。
3人の男の子達がの目の前で悲劇は起こった。
椅子に後ろ手を縛られている3人。
必死に縄を解こうとしてやめろ!!と叫ぶ3人。
何があってもアンナを守ると言った次男が悲痛の叫びを上げるのが本当に痛くて切なかった。
上山くん、こういうお芝居がすごすぎるよ。
宝塚BOYSで父親の戦死を知らされた時に、タオルを噛み締めて泣いていたあのときみたいで。
今思い出しても泣けてくる・・・。
らちくんの弟も狂ったように叫び、お兄ちゃんがようやく縄を解いて2人の縄を切った後、殺してやる!と叫んだ次男より先に花瓶を手に取り博士に叩き付けてしまう・・・。
すぐさまお兄ちゃんから奪ったはさみを突き立てる次男。
酷い惨状。。
それから我に返り自分が殺したと泣き叫ぶ末っ子と、俺がやったんだと末っ子を守ろうとする次男。
そしてお兄ちゃんは2人を守るため、はさみを何度も振り下ろし、よく見ておけ!と2人に言う。
殺したのは兄ちゃんだ、と言わせて・・・。
でも消された記憶の中で、殺したのは兄ちゃんだと思わされていたのは本人自身。
それを末っ子がにいちゃんはナイフなんて持ってなかった、と思い出させるんだよね。
なぜか揉め事を起こして仕事が続かない次男。
あれっきり強迫神経症を煩っている末っ子。
会いたいのに会うのが怖い、次男とアンナ。
今のトラウマが明らかになる。
アンナと次男の愛の歌は本当、切なかったな。
2人は血がつながらない兄弟できっと愛し合っていたのでしょう。
けれどあんなことがあって。
守り切れなかった無念さと、抱きしめようとした時に怯えられたことがどっかに残っていたんだろうな。
歌も美しかった。
らちくんがパンフでも言ってたけど、スリルミーみたいな感じがあった。
サスペンスっぽいあの雰囲気がまず似ていて、1番スリルミーだと思ったのは火をつけるところ。
小西くんとらちくんがいるから余計に思ったのかもだけど。
燃える炎の中で、記憶を消すための催眠療法をする歌がなんだか彷彿とさせたな。
過去に遡って謎が明らかになる構成とか。
そして鈴木さんの演出らしく、5人ともとっても魅力的だった。
上山くんのやった次男のキャラ設定はオリジナルからかなり変わってるらしいけど、それが本当にピッタリで。
当て書きっていうのがあるけど、当て書きじゃなくても設定をちょっと変えるだけで当て書きのような、その役者の魅力を引き出す演出ができるんだなぁって思った。
それは宝塚BOYSを何作か見ればわかることだけど。
すっと背が高くてイケメンでいい声の小西くんを立派な長男にしたのや、
どっかポンコツな上山くんを妹にコロッと騙されちゃう次男にしたのや、
キュートで愛嬌のあるらちくんをひたすらにかわいいかわいい末っ子にしたのや、
男役出身の音月さんを男勝りなかっこいいアンナにしたのや。
そのまま普段のお稽古もこんな雰囲気なのかなって思わせるような。
そうそう!
子供時代と大人のシーンを行ったり来たりするんだけど、小西くんの声の変え方がすごかったの!
他の3人はそこまで発声には変化がなかったんだけど(どっちかどいうとしぐさなどの声以外の部分で子供になってた)、小西くんの子供の時への変化がね。
かっわいいの!
かっわいいんだけどちゃんと頼れるお兄ちゃんで、ああちゃんとできる役者がいる舞台っていいな〜って思った。
ちゃんと歌える役者のいるミュージカルもね!
再演があったらまた見たい。
そんないい舞台にまた出逢えました。