偏食観劇屋

色々見たい、偏ったエンタメファン

圧倒的

スワンレイク千秋楽、期待のマシューボールにすっかり魅了されてしまいました。

登場してすぐ、と言っても設定では夢の中?まだ一つ紗幕の向こう、完全には姿を現してないのに全然違う!!って思った。腕の動きが人外!人ならぬモノ感がすごい。鳥が羽を伸ばす、想像以上に大きい!とびっくりするあの感じ。腕の全てが見えていて我々はその大きさを想像ができるはずなのに、羽ばたく動きは想像を超えてダイナミックに感じる。

これはすごいぞ!という期待感。

公園のシーンまでは唯一のチャンスとばかりに覚えたキャストを追ったり、ドミニクの表情豊かなお芝居にのめり込んだり。

それにしても今も続いてる王室をこんな風にストーリーに取り入れられることがさすがイギリスだなと思う。王子は公務の途中で何度もボンヤリしちゃって女王に怒られるし、王子が病んでるのは明らかだし、よく見せる設定でもないのに。日本では現代の皇室をなかなかこんな風に扱えないよなぁと思う。

ガールフレンドが庭にやってきた極彩色の綺麗な鳥と、どなたかが書いていてなるほどなぁと思った。自由奔放で色鮮やかな小鳥は窮屈で灰色の世界(実際には煌びやかでも)を生きる王子に救いとなったんだろう。最初は恐る恐る、でも惹かれていく様が初々しい。

バレエ鑑賞のシーンはどっちを見ていいかわからなくて辛い。ついついバルコニー席に夢中になりがちだったけど、最後はすっかりバレエの方を見てしまって色々笑いどころを見逃しちゃった!

ところであとはスマホなのにアンテナ引っ張り出して電話するのは一体…ガラケー

スワンクの歳のいった踊り子はどなたなのか結局わかんなかったな。ガニ股でコミカルな踊りで何回見ても笑える。

いよいよ公園シーンへ。

公務は辛いし母の愛は受けられずガールフレンドも認められず、王子は遺書を書いて入水自殺を試みます。がその時現れる一羽のスワン!

その前に水に浮かんでスイーッと横切る姿にキタキタ!!となる客席。いや、今回ね、客席が引き込まれてく空気感がすごかったです。どこかのベテラン演出家が、客を前のめりにさせないとなんて言ってたけど、なぜこの感じをキャッチできないんだよ鈍感め!と思うよ。

そこからのスワンズの踊り、初日に2回見たと思えないくらい新鮮でどれもこれも魅了された。やはり同じ出演者でのダンスシーンが長く続くとちょっと飽きちゃって。王子とザスワンのところか、奥から♏️←こんな感じに左右に踊り流れてくるスワンズ、あと4羽のスワンズ辺りが印象的だけどその他はなんとなく見てしまってた。この回を見られてよかった。なんだかずっと涙目で見てたなぁ。

ザスワンと王子の関係は、互いに興味を持ちながらも警戒してたり怯えてたりする、最初の辺りがとてもピュアで泣ける。マシューボールのザスワンは首領(ドン)みたいな感じじゃなくて、群れの中でもとびきり美しくて、周りに奉られてる感じがした。リーダーではなく神枠。統治せずな辺りが王子との共通点なのかも。

王子がザスワンに惹かれていくのがすごく腑に落ちるマシュースワン。紅天女だよね。人外の、おそろしくて美しいなにか。どうしようもなく惹かれる抗えない存在。そんななにかが応えてくれるのだから王子はそりゃあとでストレンジャー見て狂うほど落ちてしまうよ。

マシューボールのザスワンはそんなにも強烈な魅力を放っていながら、とても優しくて。王子の手を払いのけたり威嚇しつつも本気ではなくてちょっとずつ警戒心を解いていくの。たまらない。ジャンプをすれば静止画のように長く美しく。ため息と涙が溢れる。

とんでもねえ美しいものに出会い、心を通わせ、生きる力を得た王子は餌やりのおばあさんに抱きつきキスをし、遺書を破り捨てて笑顔で走ってゆく。

2幕はいよいよストレンジャーの登場でございます!今か今かと待ち構えてるとバルコニーの手すりを横歩きしてやってくるストレンジャー!!待ってましタァ!!

ウィルの時は席が遠くて、マックスの時は同じ列だったけど、こんなんじゃなかった。表情が恐ろしく魅力的なストレンジャー。各国王女たちとイギリス女王を誘惑しまくるのを心底楽しんでるーー!!なんてやつ!!執事をもからかい、男たちを怒らせ、でもしまいには怒らせた男たちをも魅了してしまう恐るべしストレンジャー

色気たっぷり、強烈な魅力に捕まってしまう!

マシューボールのお顔、艶めかしく美しいのだけど全く私の好みではないのに、舞台で笑みを浮かべて踊るストレンジャーの表情はあまりに魅力的で好きなやつだーってなる。なんで??

それであのダイナミックなダンス。空中で静止するようなジャンプ。気付けばカッコイイ…という心の声が。2人で踊る時の目線使いがまた好みでヤバい。相手から目線をあえて外す、そしてニヤリ。あかーーん!!

ストレンジャー、自由気ままに相手を変え、時には男性にすら視線を送るとんでもないパーティクラッシャー。

特に好きだったのが男女に分かれて踊るところ。

さっきまであいつなんなんだよっ!!って顔で見てた男たちに声をかけて引き込んでくの。からのストレンジャーリードでの群舞!

むちゃくちゃカッコ良かった!!

なんか、WSS

チームをリードする感じが。

ぐはーっ♡

語彙を失うね。

そんなのを、あの時のスワンを思い出してなんとか振り向いてもらおうとする王子。Wペアで踊るシーンはペア同士のバトルから入れ替わって同性同士が組んだり。睨み合ったり。愛憎渦巻く迫力のダンスシーンになっていて。

最終的には母親がストレンジャーにすっかり参ってメロメロ。ストレンジャーもそれを楽しんじゃってる。

🦢&👑のシーンでは人々はいつのまにかいなくなり、照明は青に変わり、妄想の中のシーンだとわかるのだけど、それを理屈でなく感覚でわかったのは今日が初めて。それが恐怖と感じた。王子の狂気が見えたから。

妄想は2度も起こるけど、妄想は妄想。やっぱり現実には母親がストレンジャーにドップリなのだ。

王子の狂気は限界に来てついに銃を取り出す。妄想の世界ではあんなにも怪しく魅力的で王子に向いていたストレンジャーなのに、母親を守ろうと盾になろうとする。あのザスワンとは違う、真っ当な感覚を持ったただの人。人外のザスワンにはない、人としての普通さにもザスワンを重ねてた王子は絶望したのかな…なんて。

その後の幽閉シーンは英国万歳!をちょっと思い出した。女王軍団が不気味で怖い。王子の頭の中の狂気。得体の知れない治療を受け身も心もボロボロになってベッドに横たわる王子の周りにどこからともなく集まってくるスワンズ

あれって、彼らの神を地に貶めた人間への恨みなのかな。またザスワンへもまた、崇めてた神が人間などというつまらないものに心を向けたことを裏切りとして復讐したってことなのかなと。

ここからのスワンズは映画館で見た時にも思ったけどヒッチコックの鳥ですよね。めっちゃ怖い。私は鳥のくちばしが嫌いで鳥が怖いので、スワンズがザスワンや王子をむしってるのがホント怖いです…

王子を助けようと、すでに傷だらけの身体を引きずってやってくるザスワンが切なさの極み。

あの公園の一晩で、言葉も通じない人外と人とが作った絆の深さよ!!何か超越した存在だからこそなのか。

ところでスワンズ、ベッドの両脇からベッドのヘッドパネルの飾りを持ってクルンッと飛び出してくるのがすごく好き。去ってく時もやるんだけど身軽でカッコいい。

この壮絶シーンにビリーでも使うあの曲な訳ですよ。ビリーはこれで飛べたのにこっちはこれで羽をもがれる。なんてこと!

最後には死の先で結ばれる2人…1人と1羽だけど、やはり最後は涙涙。

多分マシューボールを見てなくても回数重ねるごとにいつかはハマっていったとは思うんだ。

けど、マシューボールを見れて本当に良かった!

あの王子とザスワンのようにためらいがちに近づいていこうとした私を一気に背中から蹴られるようにスワンレイクという作品に落としてくれた!

日本に来て踊ってくれてありがとう。