偏食観劇屋

色々見たい、偏ったエンタメファン

ナウシカ歌舞伎

ナウシカ菊之助怪我の翌日公演だったので、宙乗りや立ち回りなどの演出はカットという、完全な形ではなかったものの、楽しかった。最初に言っておくと、多くの場面と長いストーリーがあるので、昼夜通しといえどかなり展開は早くストーリーを把握してないと厳しいところはある。が、それが歌舞伎っぽくもある。長いストーリーの一部だけ上演というのはよくあるどころか、デフォルトだから。

とはいえ、沢山ある重要なシーンをかなり詰め込んでるので、一場面しか使わないセットや映像が多々あってめちゃくちゃ贅沢なセットだった。幕にイラスト風の映像を写すというのは何度もやっていた。(実際の絵じゃないよね??多分)

これはチケット代高くなるよなぁと、わりと前半で思った。目の前に実物代で王蟲やら巨神兵が現れるのは感動する。

あと歌舞伎で上手く解決してるなーと思ったのは、"○○の精"という扱い。王蟲巨神兵も、動かないハリボテ(巨神兵は外形に映像を映して動きを出してた)、しかも巨大すぎて一部しか作れないので、それだけだと移動できないし、人と芝居ができない。

で、巨神兵の精と王蟲の精である。上手い解決方法だと思った。これが夜の部では歌舞伎らしい演出となっていてめちゃくちゃ盛り上がった。巨神兵墓所の…ナンカとの闘いは、毛振りという形で行われる。これも上手いなーと思った。

生霊だの王蟲の精だの出てきたけど明らかに違う2人。もっさもっさのカツラで出てきた時これはーー!!毛振りかーー?!?!となった。

言葉を書いた紙?みたいな衣装の人たちがパッと赤白の衣装に変わるところも圧巻!客席のテンションが明らかに変わったのを感じてうっひゃー!という感じ。

そういやこれぞ歌舞伎エンタメ!ってシーンは昼の部にもあって、ユパ様達の王蟲培養工場での立ち回り。始まる前から前列にビニールシートが配布されてるようだとは気付いたけど、破壊された培養液がばっしゃーーん!!!ですよ!後ろの席のご婦人は思わず声をあげて喜んでた。

滝沢歌舞伎みたいにびちゃびちゃで、最後花道のところでアスベルがわざと帯の水を絞るんだよ。花脇のお客さん見て会場が笑う。

これで宙乗りもあったら大スペクタクルショーだな、と思った。映像でもいいから見てみたいな。

菊之助ナウシカが最初のシーンで腰にあの小さいウエストポーチつけて出てきた時わぁ!ってなった。ちょい色っぽすぎやしないか?と思ったけど、ナウシカって少女って感じではなかったよなーと納得。色気もあるキャラだった。お怪我してる左腕はほぼ動かさずだったけど、お芝居にそれほど違和感はなく。周りが強烈なキャラばっかりなので、ナウシカはこれくらいが丁度良いのかもと思ったり。

王蟲の抜け殻の丸いところ作ったの天才!って思った。あと衣装が青に変わるところは盛り上がったよねー。金色の草原は(王蟲の触覚?)どうするの?と思ったけどあれはあれで良かった。王蟲の精のおかげで可愛らしいシーンにもなった。

クシャナ殿下はもう配役聞いた時から絶対カッコいい!ってのが分かってたけど、ホントその通りで最初から最後まで凛々しくてかっこよかった。足を組んで座るのとか普段の歌舞伎では絶対見れないしね。声は女声というわけでもないし、甲冑着て勇ましいのにどこまでも女性というのが不思議。男装の麗人って感じなのよ。映画のストーリーしか知らなかったから、最後はナウシカの同志になるの、良かったなぁ!

そのクシャナパパ、ヴ王もよかった!

特に夜の部後半の、ナウシカと出会った辺りから小娘とか言いながらちゃんと対等に相手して影響受けて。ナウシカの説得力も大事よね、そこは菊之助さんのいいお仕事。真っ直ぐな感じが良く出てた。

お嬢と和解できてよかったねー。

狂言回しさんもいい味だしてたなー。

やー。みんないいんだわ。

でも何よりはあ〜ん!素敵!となったのはやっぱり芝のぶさんだよ!!!庭の主がすんごかった!!声がね、ヤバい。ナウシカの母役もやったんだけど母のフリをして騙すってシーンがあって、別の人が喋ってるくらい声の変化がすごい。母役の時は女形の声じゃないんだわ、もはや。女声の裏声なんだわ。

で、もうそういう声の役者さんなのかな?と思いきや、庭の主が現れて途端何とも言えない迫力を帯びた低音になるの。はあ〜すごい!

顔はお美しいし声も素敵だし、みんなが印象的な役に配役したがるのわかるわー。

笑っちゃう、無理、ありえないという声も聞くけど、テレビで一部分だけ見たってダメだよ、そりゃ滑稽だろうよ。こっちの世界方から決めてって言いたい。こんなに歌舞伎として成立する、歌舞伎でこそ解決できる作品だとは私も思ってなかったもん。